F1と固定種・在来種の違い

 

種子のパッケージの表面をよく見ると、「交配」「F1」「○○交配」といった言葉が書かれていることがあります。一方で、そうした表示のないパッケージもあります。この違いは何なのでしょうか。じつはこれ、その種子が「どうやって作られ、次の世代にどう受け継がれるか」を表しています。

野菜の種子は、大きく分けて「F1(一代交配種)」「固定種」、そして固定種の一種である「在来種」に分けられます。2026年現在、ホームセンターや種苗店に並ぶ野菜の種の多くはF1ですが、固定種・在来種も根強い人気があります。この記事では、3つのタイプの違いを、なぜそうなるのかという仕組み(メンデルの法則)までさかのぼって整理し、さらに自家採種で気をつけたい種苗法のルールまで、まとめてお伝えします。どちらが優れている・劣っているという話ではなく、フラットに見ていきます。

揃いがよく作りやすい
F1
(一代交配種)
異なる純系をかけ合わせた種
性質を受け継げる
固定種
世代を重ねて安定した種
地域に根ざす
在来種
その土地で受け継がれた種

「品種」と「種子のタイプ」は別の話

本題に入る前に、混同しやすい2つの軸を整理しておきます。野菜の種子を語るとき、じつは「品種(銘柄)」「種子のタイプ(作られ方)」という、別々の話が混ざりがちです。

「品種」は、その野菜の銘柄・名前にあたるもの。トマトなら大玉・中玉・ミニといった違いや、それぞれにつけられた商品名がこれにあたります。一方で「種子のタイプ」は、その品種の種がどういう仕組みで作られ、次の世代にどう受け継がれるかという話です。F1か固定種か、というのはこの「タイプ」の区別です。

つまり、「ある品種はF1で、別の品種は固定種」というように、品種ごとにタイプが決まっています。同じ野菜でもF1の品種と固定種の品種の両方が存在することは珍しくありません。まずは「銘柄の話」と「種の仕組みの話」を分けて考えると、以降の内容がすっきり頭に入ります。

この記事で使う言葉の整理
F1
「Filial 1(雑種第一代)」の略。異なる親をかけ合わせて作る一代交配種
純系(じゅんけい)
何世代も選抜・自殖をくり返し、遺伝的に均一に固定された系統。F1の親に使われる
固定種
世代を重ねて形質が安定(固定)した品種。自家採種で同じ性質を受け継ぎやすい
在来種
特定の地域で長く栽培・採種されてきた固定種の一種。地域の名前を冠することが多い
自家採種
育てた野菜から種を採り、翌年以降にまくこと
登録品種
新たに育成され、種苗法にもとづいて品種登録された品種。育成者の権利で保護される

F1(一代交配種)とは

F1は、性質の異なる2つの親(系統)を人の手でかけ合わせて作る、雑種の第一代です。「F1」の「F」は、子・子孫を意味する英語「Filial」の頭文字で、第一世代(first filial generation)を表します。種子のパッケージに「交配」「F1」「一代交配」などと書かれているものがこれにあたります。

なぜ「揃う」のか ― メンデルの法則で考える

F1がそろう理由は、エンドウの実験で有名なメンデルの法則でうまく説明できます。少しだけ仕組みをのぞいてみましょう。

F1の親に使うのは、「純系(じゅんけい)」と呼ばれる、何世代も選抜・自殖をくり返して遺伝的に均一になった系統です。性質がきっちりそろった純系の親を2つ用意し、それらをかけ合わせます。すると、生まれてくるF1はみな同じ遺伝的な組み合わせを受け取ることになります。父親からも母親からも、決まった性質が一通りに伝わるからです。

メンデルは、性質の異なる純系どうしをかけ合わせると、雑種第一代(F1)はそろって同じ形質を示すことを見いだしました(優性〔顕性〕の法則として知られる現象です)。だからF1は、背丈・収穫時期・実の大きさや形などがよくそろい、畑全体で生育が均一になって計画的に収穫しやすいのです。この「揃いのよさ」こそが、F1の最大の持ち味です。

なお、F1には「そろう」だけでなく「勢いがよい」という特徴もよく見られます。異なる系統をかけ合わせた雑種が、両親より生育旺盛になる現象を雑種強勢(ヘテロシス)と呼びます。揃いのよさ(メンデルの法則で説明される均一性)と、勢いのよさ(ヘテロシス)は別々の現象ですが、どちらもF1の作りやすさを支えています。

採った種(F2)は分かれる ― 分離の法則

ここがF1を理解するうえでいちばん大事なところです。F1から採った種(第二代=F2)をまくと、性質がばらけます。これもメンデルの法則で説明できます。

F1は、両親から受け取った異なる性質を一身に持っています。そのF1が種(配偶子)を作るとき、対になっていた性質が分かれて受け継がれていきます。これがメンデルの「分離の法則」です。その結果、F2ではいろいろな性質の組み合わせが現れ、ばらつきが出ます。メンデルのエンドウの実験では、1つの性質に注目すると、F2はおよそ3対1といった決まった割合に分かれることが示されています。

実際の野菜では、背丈や形・大きさ・味といった性質に多くの遺伝子が関わるため、こんなに単純な割合にはなりません。けれども結果は同じで、F2では背丈・形・大きさ・味などがいろいろに分かれて、そろわなくなるのです。そのためF1は「毎年、種を新しく買ってまく」前提で使う種子だといえます。これは欠点というより仕組みの話で、揃いのよさと表裏一体の性質です。

どうやって作られる ― 親系統を維持する手間

F1の種を安定して作るのは、じつはとても手間のかかる仕事です。まず、かけ合わせる2つの純系の親を、毎年きちんと維持・管理しなければなりません。そのうえで、目的のかけ合わせだけが起こるように、片方の花粉が混ざらないよう管理しながら受粉させ、種を採ります。作物によっては、この交配や受粉の作業に多くの人手がかかります。

こうした手間とコストがかかるぶん、F1の種子は固定種より価格が高めになることがあります。値段の違いの背景には、こうした「種を作る手間」があるわけです。また、F1は計画的な交配のなかで、病気への強さ(耐病性)や収量、作りやすさといった性質を持たせて育種された品種が多いのも特徴です。

こうした耐病性は、種子のパッケージやカタログでアルファベットと数字を組み合わせた符号(たとえば Cf9、Ty-3a など)で示されることがあります。これは「どの病気に強いか」を表す記号です。ただし「耐病性」と「抵抗性」は意味合いが少し異なり、混同されやすい言葉でもあります。表示の見方や両者の違いについては、別の記事「耐病性と抵抗性の違いって何?」でくわしく解説していますので、気になる方はあわせてご覧ください。


固定種・在来種とは

固定種は、同じ性質の株どうしで何世代も採種をくり返し、形質が安定(固定)した品種です。種子のパッケージに「交配」「F1」といった表示がないものの多くは固定種です。

どうやって「固定」されるのか

固定種は、長い時間をかけて作られます。育てた中から「この性質を残したい」という株を選び、その株から種を採ってまた育て、また選ぶ。この選抜と採種を何世代もくり返すうちに、集団の遺伝的なばらつきが少しずつ減り、やがて「だいたいいつも同じ性質の野菜が穫れる」状態に落ち着きます。これが「形質が固定された」という状態です。

この仕組みのおかげで、固定種は採った種をまいても、おおむね同じ性質の野菜が育ちます。F1のようにF2でばらけることが基本的にないため、種を自分でつないでいけるのです。長い年月をかけて人の手で受け継がれてきた、いわば「時間が育てた品種」だといえます。

自家採種で受け継げる ― ただし後述の確認を

固定種の最大の特徴は、育てた野菜から種を採って翌年まいても、おおむね同じ性質の野菜が育つこと。F1のように毎年買い直さなくても、自分で種をつないでいけます。種採り(自家採種)そのものを楽しみたい人、何年もかけてお気に入りの系統を育てていきたい人に向いています。

一方で、F1ほど揃いがよくないことが多く、同じ畑でも株ごとに生育や形に少しばらつきが出ることがあります。これは「個性がある」ともいえる部分で、収穫期間が自然とずれることでだらだらと長く穫れる、という見方もできます。家庭で少しずつ使うには、むしろこのほうが便利なこともあります。

ただし、「固定種なら何でも自由に種採りしてよい」とは限りません。その品種が種苗法で保護された「登録品種」かどうかによって、自家採種・自家増殖の扱いが変わります。これは大切な点なので、のちほど専用の章でくわしく説明します。

在来種 ― 地域に根ざした固定種

在来種は、特定の地域で長く栽培・採種され、その土地の気候や食文化に合うかたちで受け継がれてきた固定種のことです。地域の名前がついた野菜の多くがこれにあたります。その土地ならではの味わいや形、調理法と結びついていることが多く、地域の食文化を支える存在でもあります。

在来種は固定種の一種なので、性質としては固定種と同じく自家採種で受け継いでいけます。長い時間をかけてその土地に適応してきた多様な性質を含んでおり、作物の遺伝的な多様性を守るうえでも大切な存在です。一方で、栽培される範囲が限られていることも多く、種子が手に入りにくい場合があります。なお在来種は、後述する「一般品種」にあたるため、自家採種は自由に行えます。


3つのタイプを並べて見る

ここまでの内容を、3つのタイプで横並びに整理します。あくまで一般的な傾向で、品種によって例外もある点はご了承ください。

F1
一代交配
揃い・作りやすさ重視。毎年買ってまく

生育・収穫が揃いやすく、計画的に収穫しやすい。耐病性などを持たせた品種が多い。採った種(F2)はばらけるため、毎年新しく購入してまくのが前提。

固定種
自家採種で受け継げる。個性とばらつき

採った種をまいてもおおむね同じ性質になるため、種をつないでいける。F1より揃いはやや劣ることがあるが、収穫が長く続く・固有の味わいといった魅力がある。

在来種
地域に根ざした固定種。食文化と結びつく

その土地の気候・食文化に合わせて受け継がれてきた固定種。固有の味や形、遺伝的な多様性が魅力。栽培される地域が限られ、種子が手に入りにくいこともある。

表で比べると、それぞれの位置づけがよりはっきりします。

観点 F1(一代交配) 固定種・在来種
揃いのよさ 揃いやすい ばらつきが出ることがある
採った種の性質 F2で分離してばらける 同じ性質を受け継ぎやすい
収穫の集中度 そろって穫れやすい 長くだらだら穫れやすい
価格の傾向 やや高めになることがある 比較的手ごろなことが多い
向く場面 計画的な栽培・初めての作物 種をつなぐ・固有の味を楽しむ

※自家採種が実際に行えるかは、生物学的な性質だけでなく、その品種が「登録品種」か「一般品種」かにもよります(後述の種苗法の章を参照)。


なぜ今、市販の種の多くがF1なのか

かつては、野菜の種といえば固定種が中心でした。それが現在では、店頭に並ぶ多くの品目でF1が主流になっています。その背景には、いくつかの理由があります。

ひとつは、揃いのよさが求められるようになったことです。野菜が農家から市場や店頭へと広く流通するようになると、大きさや形、収穫時期がそろっていることが扱いやすさにつながります。箱に詰めるにも、棚に並べるにも、ばらつきの少ない野菜のほうが都合がよいのです。生育がそろうF1は、こうした「規格をそろえたい」という要請によく合いました。

もうひとつは、育種(品種改良)の技術が発達したことです。狙った性質を持つ親どうしをかけ合わせ、病気への強さや収量、作りやすさといった特徴を持たせたF1を、安定して作れるようになりました。限られた畑で効率よく、失敗を少なく育てたいという作り手のニーズにも応えるかたちで、F1は急速に広がっていきました。

一方で近年は、固定種・在来種を見直す動きも各地で見られます。その土地ならではの味や、種をつないでいく文化的な価値、生物としての多様性を大切にしたいという思いから、家庭菜園や直売を中心に、あらためて固定種を選ぶ人も増えています。F1が広まったことも、固定種が見直されていることも、どちらも「作り手・食べ手が何を大切にするか」の表れだといえます。


「どちらが優れている」ではなく「目的で選ぶ」

ここまで読んで「結局どっちがいいの?」と思われたかもしれません。結論からいえば、F1と固定種に優劣はなく、目的によって向き不向きがある、というのが正直なところです。どちらも、それぞれの良さを生かして長く使われてきた種子です。

たとえば、はじめてその作物を育てる方、限られたスペースで確実に収穫したい方、収穫時期をそろえたい方には、揃いがよく作りやすいF1が心強い味方になります。一方、育てた野菜から種を採ってつないでいきたい方、その土地ならではの味を楽しみたい方、収穫が長く続くほうが家庭で使いやすいという方には、固定種・在来種がよく合います。

もう少し具体的に、よくあるケースで考えてみましょう。はじめて家庭菜園に挑戦する方は、まずは揃いがよく失敗の少ないF1から入ると、「育てて穫れた」という成功体験を得やすく、栽培そのものを好きになりやすいはずです。毎年の家庭菜園に慣れてきて、次のステップを楽しみたい方は、好きな野菜を一つ固定種に切り替えて種採りに挑戦すると、栽培の奥行きがぐっと広がります。少量多品目で直売などに取り組む方は、その土地の在来種を取り入れることで、ほかにはない個性や物語を商品に持たせることができます。

同じ人でも、「主力の夏野菜は作りやすいF1で、こだわりの一品だけ固定種で種採りに挑戦」というように、組み合わせて使うのもおすすめです。どちらか一方に決めなければならないものではありません。「正解」は人それぞれの楽しみ方や目的のなかにあります。

【注目ポイント】F1から種を採るときの心づもり
F1の野菜から採った種をまくと、前述のとおり性質がばらけます。「同じ野菜がもう一度できる」とは限らないことを知ったうえで、どんな野菜が出てくるかを楽しむ実験として種採りをするなら、それはそれで面白い体験になります。確実に同じものを育てたいなら、固定種を選ぶか、F1の種を新しく購入しましょう。

種子のパッケージの表示の読み方

店頭で種子を選ぶとき、パッケージのどこを見ればタイプが分かるのでしょうか。いくつかの手がかりがあります。

もっとも分かりやすいのは、「交配」「F1」「一代交配」といった表示があるかどうかです。これらの記載があればF1、特にそうした表示がなければ固定種であることが多い、というのが一つの目安になります(ただし、すべてのパッケージが明示しているわけではないため、絶対ではありません)。判断に迷うときは、種苗店のスタッフに尋ねるのが確実です。

あわせて確認しておきたいのが、発芽率と有効期限(発芽検査をした年月や「○年○月までにまく」という表示)です。発芽率は「まいた種のうちどのくらいが芽を出すか」の目安で、たとえば発芽率80%なら、まいた10粒のうちおよそ8粒が芽を出す計算になります。種子は時間が経つほど発芽の力が落ちていくため、有効期限の範囲内に、できるだけ新しいうちに使い切るのが基本です。古くなった種をまくときは、発芽率が下がっている前提で、少し多めにまくと失敗が減ります。

さらに、後述する「登録品種」にあたる種子には、その旨やマーク(「登録品種」「PVP」など)が表示されています。種をつないでいきたい方は、この表示もチェックしておくと安心です。種子の量(入数)の表示の読み方については、別の記事「種子の入数表示について」でくわしく解説していますので、あわせてご覧ください。


自家採種に挑戦するなら ― 基本と、種苗法のルール

固定種・在来種の楽しみのひとつが、自分で種を採ってつないでいく「自家採種」です。本格的にやろうとすると奥が深い世界ですが、まずは気軽に始めるための基本と、知っておきたいルールを押さえておきましょう。なお、F1から採った種は性質がばらけるため、つないでいくことを目的にするなら固定種・在来種を選ぶのが前提になります。

種採りの基本 ― 4つのポイント

① 元気で「らしい」株から採る ── 種を採る株は、生育がよく、その品種らしい形・性質をしっかり備えた株を選びます。たまたま生育の悪かった株や、形のいびつな株から採り続けると、世代を重ねるうちに性質が少しずつ偏っていくことがあります。「いちばんよくできた株から来年の種を」と考えるのが、性質を保つコツです。

② しっかり完熟させてから採る ── 食べごろと種の採りごろは違います。種を採るための実は、食べるときよりもさらに熟させて、種が十分に成熟してから採ります。トマトなら真っ赤を通り越して完熟させ、豆類ならさやが茶色く乾くまで畑に置いておく、といった具合です。未熟なうちに採った種は、発芽の力が弱いことがあります。

③ 交雑(こうざつ)に気をつける ── 自家採種でいちばん難しいのが、別の品種の花粉が混ざる「交雑」です。交雑が起こると、せっかくの固定種でも、採った種から思わぬ性質の野菜が出てくることがあります。とくにアブラナ科(白菜・大根・カブなど)やウリ科は、虫によって品種間で交雑しやすいため、種採りを狙う品種は他の近縁種から距離を離す、時期をずらすなどの工夫が必要です。一方、豆類・トマト・ピーマンなどは、自分の花の中で受粉する性質(自家受粉)が強く、交雑しにくいため、自家採種の入門に向いています。

④ よく乾かして冷暗所で保存する ── 採った種は、よく乾燥させてから保存します。湿気は種の大敵で、発芽の力を落とす原因になります。封筒や紙袋に入れ、品種名と採種した年を書いておき、涼しく乾いた暗い場所(冷暗所)で保管します。乾燥剤と一緒に密閉容器に入れておくとより安心です。

種採りの前に確認を ― 種苗法と「登録品種」

自家採種を始める前に、ぜひ知っておいてほしいのが種苗法(しゅびょうほう)のルールです。種をつなげるかどうかは、生物学的な性質(固定種かF1か)だけでなく、その品種が「登録品種」か「一般品種」かによっても変わります。

種苗法は、新しく開発された品種を知的財産として保護する法律です。新たに育成され、種苗法にもとづいて品種登録された品種を「登録品種」といい、開発した人(育成者)の権利で守られています。これに対し、「一般品種」──在来種、これまで品種登録されたことがない品種、品種登録の期間が切れた品種──は、こうした保護の対象外で、従来どおり自由に自家採種・自家増殖ができます。在来種や昔からある固定種の多くは、この一般品種にあたります。

一方で、登録品種は、たとえ固定種であっても、種を採って増やすこと(自家増殖)に制限がかかります。2020年(令和2年)に種苗法が改正され、2022年(令和4年)4月から、農業経営のなかで登録品種を自家増殖するには、育成者(権利者)の許諾が必要になりました。許諾を得れば自家増殖はできますが、無断で行うことはできません。登録品種かどうかは、前章でふれたとおり、種子のパッケージの「登録品種」「PVP」などの表示で確認できます(2021年〔令和3年〕からこの表示が義務化されています)。

【ご注意】登録品種の種は「他人に渡す・売る」ができません
農林水産省は、自家消費を目的とする家庭菜園や趣味の利用には、今回の改正の影響はないとしています。登録品種であっても、ご自身や家庭で食べる範囲で育て、種を採って自分でまく分には問題ありません。ただし、増やした種や、そこから穫れた野菜を、他人(親戚・ご近所を含む)に譲ったり売ったりすることはできません。また、農業経営として登録品種を自家増殖する場合は、育成者の許諾が必要です。一般品種(在来種など)は、これらの制限を受けません。

むずかしく感じるかもしれませんが、ポイントはシンプルです。在来種や昔ながらの固定種は自由に種をつなげる。新しく開発された登録品種は、自分で楽しむ範囲ならよいが、増やして人に渡すのはNG、農業経営での増殖は許諾が必要。迷ったら、種子のパッケージの表示を確認するか、お気軽に当店へご相談ください。種苗法と登録品種の仕組みについては、別の記事「登録品種とは」でもくわしく解説しています。

最初から完璧を目指さず、まずは在来種や一般品種の固定種で、交雑しにくい豆やトマトあたりから「採って、まいて、また穫れた」というサイクルを一度体験してみるのがおすすめです。自分の畑で種が一周する感覚は、栽培の楽しさを一段深くしてくれます。


よくある誤解を整理する

F1や固定種、種苗法をめぐっては、ときどき事実と少し違う見方が広まることがあります。誤解されやすい点を、事実にもとづいて整理しておきます。

「F1は不自然で危険」? ── 異なる性質のものがかけ合わさること自体は、自然界でもふつうに起こる現象です。F1は、その交配を人の手で計画的に行い、揃いのよい種を安定して作るようにしたものです。遺伝子組換えとは別の技術であり、昔ながらの交配・選抜の延長線上にあります。安全性の面で固定種と区別して心配する必要はありません。

「固定種は必ずおいしい」? ── 固定種・在来種には独特の味わいを持つものが多くありますが、「固定種だから必ずおいしい」「F1だから味が劣る」というわけではありません。味は品種・栽培方法・収穫時期によって大きく変わります。F1にも食味を重視して育てられた品種はたくさんあります。タイプではなく、品種や育て方で考えるのが実態に合っています。

「種苗法が変わって、家庭菜園で種採りができなくなった」? ── これはよくある誤解です。前章のとおり、自家消費を目的とする家庭菜園や趣味の利用には、改正の影響はありません。在来種をはじめとする一般品種は自由に種採りできますし、登録品種でも自分で楽しむ範囲なら使えます。制限がかかるのは、おもに「登録品種を、増やして他人に渡す・売る」ことや、「農業経営のなかで登録品種を許諾なく自家増殖する」ことです。すべての種採りが禁止されたわけではありません。

「F1の種は一度きりでもったいない」? ── F1を毎年買うことを「もったいない」と感じる方もいますが、これは揃いのよさ・作りやすさと引き換えの仕組みです。確実な収穫という価値に対する対価と考えると、納得しやすいかもしれません。種をつなぐ楽しみを優先したいなら固定種を選ぶ、という住み分けで考えるとすっきりします。


まとめ

F1・固定種・在来種は、どれが上ということではなく、「種がどう作られ、どう受け継がれるか」が違うだけです。違いを知っておくと、種子のパッケージの表示の意味が分かり、自分の畑や楽しみ方に合った選び方ができるようになります。

押さえておきたい5つのこと
  1. F1(一代交配種)は、異なる純系をかけ合わせた種。メンデルの法則どおりF1はそろうが、採った種(F2)は分離してばらけるため、毎年買ってまく。
  2. 固定種は、選抜と採種をくり返して安定させた種。自家採種で同じ性質を受け継いでいける。
  3. 在来種は、地域に根ざした固定種。その土地の味や食文化、遺伝的な多様性と結びついている。
  4. 優劣ではなく目的で選ぶ。組み合わせて使うのもおすすめ。
  5. 自家採種は種苗法の確認を。一般品種(在来種など)は自由。登録品種は、自分で楽しむ範囲ならよいが、増やして他人に渡すのはNG、農業経営での増殖は許諾が必要。

「自分の育て方にはどちらが向いているだろう」「この品種は種を採ってもいいのかな」と迷ったときは、どうぞお気軽にご相談ください。当店では、作りやすいF1から、種をつなぐ楽しみのある固定種・在来種まで、目的に合わせてお選びいただけるよう取りそろえています。

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