
9月も終わりに近づき、畑のハクサイやキャベツが葉を広げ、ダイコンの根が太りはじめる時期になりました。虫の見回りも追肥も済ませて、あとは涼しくなるのを待つだけ——そう思っているところに、株が1本、2本と黄色くなって倒れる。葉の裏に白いカビが浮く。株元がどろりと溶けて、独特のにおいがする。2026年の秋、この時期の畑で虫の次に相談が増えるのが、病気です。
秋冬野菜の病気は、夏野菜とは性格が違います。気温が下がるにつれて出てくる病気、秋の長雨で一気に広がる病気、そして土の中にひそんでいて植えた時点で勝負がついている病気。共通しているのは、症状が見えたときにはすでに畑の中で相当に進んでいるということです。虫と同じで、見つけてから対処するのでは間に合わない相手が多いのです。
この記事では、温暖地の秋作でとくに被害の大きい軟腐病・べと病・根こぶ病の3つを中心に、症状の見分け方、なぜ出るのか、そして「出さないための畑の作り方」を整理します。薬剤の名前には触れません。かわりに、どの病気にも共通して効く、耕種的な(栽培のやり方で防ぐ)対策に重点を置きます。秋冬野菜の病気を左右するのは、つきつめれば次の3つの言葉です。
秋冬野菜の病気は「水」と「傷」と「土」から入ります
個別の病気に入る前に、秋冬野菜の病気がどこから来るのかを共有させてください。ここが分かると、対策の意味がすっと入ってきます。
病気の原因には、細菌・カビ(糸状菌)・ウイルスの3種類がありますが、秋冬野菜で問題になるものの大半は、水と一緒に動きます。雨のしぶきで土から葉へ跳ね上がる、畝間にたまった水の中を泳いで根へ届く、葉の表面についた水滴の中で発芽して葉に侵入する。だからこそ、秋雨の時期に病気が一斉に広がり、水はけの悪い畑ほど毎年同じ病気に悩まされます。
次に、傷です。細菌の病気は、健康な葉の表面から自力で入ることがほとんどできません。虫が食った跡、風で葉がこすれた傷、間引きや収穫のときに手やハサミでつけた傷。こうした傷口が、細菌の入り口になります。当店の8月末の記事で虫よけの話をしましたが、虫を防ぐことは、そのまま細菌病の入り口を減らすことでもあるのです。
そして、土です。根こぶ病や萎黄病のように、土の中に何年も生き続ける病原菌があります。これらは畑に持ち込まれると、その畑でアブラナ科を作るたびに増えていきます。症状が出るのは植えて1か月ほどたってからですが、勝負は植えた時点、正確には畑を準備した時点で決まっています。この種類の病気に「見つけてから」の対処はなく、次の作にどう備えるかがすべてになります。
虫との違いも、ひとつ押さえておいてください。虫は「見つけて取る」ことができ、ネットで「入れない」ことができます。病気は目に見えない段階で入り込み、症状が出たときには周囲にも広がっているため、見つけてから取り除く対策の効果が虫より小さいのです。だからこそ、病気の対策は「畑の条件を変える」ことが中心になります。この記事の後半で挙げる「水はけ・風通し・輪作・持ち出し」の4つの柱は、どれも特定の病気を狙ったものではなく、畑全体を病気の出にくい状態に近づけるためのものです。
秋冬野菜の病気には、時期ごとの傾向もあります。9月〜10月上旬の残暑と秋雨が重なる時期は軟腐病、10月中旬以降に気温が下がると、べと病や白さび病、灰色かび病というように、警戒する相手が気温とともに移っていきます。根こぶ病や萎黄病のような土壌病害は、定植から3〜4週間たった9月下旬〜10月にかけて症状が出そろいます。いま畑で何が起きているかを、この時期の流れに照らして見ると、原因を絞り込みやすくなります。
この3つの入り口を意識すると、秋冬野菜の病気対策は「排水をよくして、傷を減らして、土を整える」という、ごく当たり前の栽培管理の積み重ねであることが見えてきます。特別な資材や難しい技術よりも、畝を高くする、株間を守る、窒素を効かせすぎない、道具を清潔に保つといった基本のほうが、結果として効いてきます。
水(雨のしぶき・滞水)→ 高畝・排水溝・マルチ/傷(虫の食害・作業の傷)→ 防虫ネット・晴れた日の作業・道具の消毒/土(土壌伝染性の病原菌)→ 酸度調整・輪作・発病株の持ち出し。どの対策も「発病してから」ではなく「植える前・広がる前」に打つのが原則です。
病気になりにくい株は、日々の管理でつくられます
同じ畑、同じ品種、同じ天候でも、病気が出る畝と出ない畝があります。その差の多くは、畑の条件と、そこで育った株の丈夫さにあります。秋冬の葉菜類はもともと丈夫な野菜です。病原菌は畑のどこにでもいますが、健康で組織のしまった株には簡単に入り込めません。逆に、窒素で軟弱に育った株や、滞水で根の弱った株は、わずかな条件で発病します。定植から結球までの管理のなかで、株の丈夫さを左右する点を3つ挙げます。
株間は、病気の面でも守る価値があります。株間を詰めると収量が増えそうに思えますが、葉が重なって風が通らず、葉がぬれている時間が長くなります。べと病・灰色かび病・白さび病はこの条件で一気に広がります。また、株が触れ合っていると、1株の発病が隣へ隣へと伝わります。品種の表示にある株間は、生育に必要な広さであると同時に、病気を広げないための距離でもあるのです。株が大きくなってから広げることはできませんので、植えつけのときに守っておく価値があります。
窒素の効かせすぎは、あらゆる病気を呼びます。窒素が過剰に効いた株は、葉が大きく薄く柔らかくなり、細胞の壁が薄いために病原菌が侵入しやすくなります。軟腐病、べと病、黒腐病のいずれも、窒素過多の畝で多発することが各県の防除指針で繰り返し指摘されています。先週の追肥の記事でお伝えした「規定量を守り、結球が始まったら窒素を入れない」は、病気の予防策そのものです。
水管理は「乾かしすぎず、ためない」。結球期に水を切らすと、株がストレスで弱り、ハクサイでは内側の葉の縁が枯れる生理障害が出て、そこから軟腐病が入ることがあります。一方で畝間に水がたまれば根が傷みます。乾いたらたっぷり、ただし畝間には残さない。この加減が、根を丈夫に保ちます。
軟腐病 ― 「株元が溶けてにおう」。傷口から入る細菌の病気
秋冬野菜の病気のなかで、もっとも被害が目立ち、相談も多いのが軟腐病です。ハクサイ・キャベツ・ダイコン・レタスなど、秋作の主力品目のほぼすべてに発生します。
症状の見分け方
最初は、株元や外葉のつけ根が水にぬれたように変色するところから始まります。数日で患部が広がり、組織がどろりと溶けて、特有の強い腐敗臭を出します。このにおいが、ほかの病気との大きな違いです。ハクサイでは結球しはじめた玉の外側から、あるいは外葉のつけ根から腐り込み、株全体がぐしゃりと崩れます。ダイコンでは根の首の部分や、根の内部が空洞になって腐ります。晴れた日には日中にしおれ、まだ葉が緑色のうちに株が倒れることもあります。
品目ごとの出方も知っておくと見つけやすくなります。ハクサイは、結球のはじまった株の外葉のつけ根から侵され、玉を持ち上げると根元がすでに溶けていることがあります。キャベツは、傷ついた外葉の葉柄から茎の中心へ腐りが進み、玉の内部まで広がると外からは分かりにくくなります。ダイコンは、地上に出た首の部分や葉のつけ根から入り、根の内部が空洞化して悪臭を放ちます。葉は健全に見えても、根を抜いてみると中が溶けていることがあるので、見回りのときに数本、株元を指で押して硬さを確かめておくと安心です。レタスは、結球期に外葉の下から腐り込み、玉全体が崩れます。いずれも共通するのは「においがする」ことで、畑に入ったときに腐敗臭を感じたら、風上をたどって発生源を探してください。
なぜ出るのか
原因は土の中に普通に存在する細菌で、傷口から侵入します。虫の食害跡、風雨で葉がこすれた傷、作業でついた傷、追肥や土寄せのときに株元にできた傷。そこに雨のしぶきや畝間の滞水で細菌が運ばれると発病します。高温多湿の条件で急速に広がるため、温暖地では9月から10月の、残暑と秋雨が重なる時期がもっとも危険です。また、窒素が効きすぎて組織が軟弱になった株は、とくに侵されやすくなります。「葉が大きく柔らかく育った年ほど軟腐病が出る」というのは、多くの方が経験されていることだと思います。
出さないために
対策の柱は、「傷をつくらない」「水をためない」「窒素を効かせすぎない」の3つです。虫を防いで食害の傷を減らす(防虫ネットを掛けている畝は最後まで維持する)。畝を高くして畝間に水がたまらないようにし、マルチで泥はねを防ぐ。追肥は規定量を守り、結球が始まったら窒素を入れない。作業はできるだけ晴れた日に行い、雨のあとの葉がぬれた状態で株に触れない。そして、発病した株は見つけしだい抜き取って畑の外に出すこと。溶けた株を畑に残しておくと、そこから細菌が畝全体に広がります。抜いたあとの穴に触れた手や道具で、健康な株を触らないよう注意してください。
軟腐病そのものを直接防ぐ手段は限られますが、入り口である傷(虫の食害)と、侵されやすい体質(窒素過多)は栽培管理で抑えられます。虫を防ぎ、結球期に窒素を入れない——当店が前回・前々回の記事でお伝えしてきた管理は、そのまま軟腐病の予防になっています。
べと病 ― 「葉裏に白いカビ」。涼しく湿った日が続くと広がる
気温が下がりはじめる10月以降、ハクサイ・キャベツ・カブ・ダイコン・ホウレンソウ・タマネギの苗などに出てくるのが、べと病です。株が枯れることは少ないのですが、葉の面積が失われて生育が止まり、結球野菜では玉の外葉が汚れて品質が落ちます。
症状の見分け方
葉の表に、葉脈で区切られた角ばった淡い黄色の斑点が出ます。そして葉の裏側を見ると、その斑点の位置に白から灰色のカビがうっすらと生えています。この「表は黄色い斑点、裏は白いカビ」の組み合わせが、べと病の決め手です。朝、葉がぬれているときに葉裏を見ると、もっともよく分かります。進行すると斑点が茶色く枯れ、外葉から順に枯れ上がっていきます。ホウレンソウでは、葉が黄色くなって裏にカビがつき、株全体が萎縮します。
なぜ出るのか
原因はカビ(糸状菌)の仲間で、葉の表面に水滴がある状態で発芽して侵入します。発生しやすいのは、気温がやや低めで湿度の高い日が続くとき。おおむね10〜20℃の範囲で、曇雨天が続いたり、朝露が長く葉に残ったりする条件で一気に広がります。温暖地では10月から11月にかけての秋雨期と、春先が発生の山です。株間が狭くて葉が重なり合っている畝、窒素が効きすぎて葉が茂りすぎた畝、水はけの悪い低い畑ほど、葉がぬれている時間が長くなって発生が増えます。
出さないために
対策の中心は、「葉が乾く時間をつくる」ことです。株間を守って葉が重なりすぎないようにする。窒素を効かせすぎない。畝を高くして畝間に水を残さない。防虫ネットを張っている畝では、ネットが葉に密着すると内部の湿度が上がるので、株が大きくなったらトンネルを高くするか、日中に換気できるようにしておく。そして、発病した葉は早めに取り除いて畑の外に出すこと。葉裏のカビは胞子の供給源ですから、そこを減らせば広がりを遅らせられます。品種によって「べと病に強い」と表示のあるものがありますので、毎年悩まされる畑では、次の作で選ぶ手もあります。
べと病で注意したいのは、病原菌が作物ごとに違うということです。ハクサイやカブに出るべと病と、ホウレンソウに出るべと病、タマネギに出るべと病は、それぞれ別の菌が原因で、互いにうつることは基本的にありません。ですから「隣の畝のハクサイにべと病が出たからホウレンソウも危ない」とは限らないのですが、発生する条件(涼しくて湿った天候・葉がぬれた時間の長さ)は共通です。ひとつの品目に出はじめたら、畑全体がべと病の出やすい条件に入ったと考えて、ほかの畝の葉裏も見てください。とくにホウレンソウは、10月まきの作型で発生が多く、密植と過湿で一気に広がります。株間を確保し、間引きを遅らせないことが対策になります。9月にまいたタマネギの苗床でも、苗が込み合ってくる10月以降にべと病が出ることがあります。苗床の風通しを保ち、込み合う前に間引いておくことが対策になります。
根こぶ病 ― 「日中しおれ、根にこぶ」。土に何年も残る最も厄介な病気
アブラナ科の野菜だけに出る病気で、一度畑に入ると何年も、場合によっては10年近く土の中に残るとされる、秋冬野菜でもっとも厄介な相手です。ハクサイ・キャベツ・ブロッコリー・カブ・コマツナ・ミズナなど、アブラナ科ならほぼすべてが対象になります。
症状の見分け方
地上部だけ見ていると、最初は分かりません。晴れた日の日中に葉がしおれ、夕方から朝には回復する——これを何日か繰り返したあと、株の育ちが止まり、下葉から黄色くなっていきます。「水切れかな」と思って水をやっても改善しないのが特徴です。決め手は根です。株を抜いて根を見ると、大小のこぶがいくつもついて、根がふくれ上がっています。こぶのために根が水や養分を吸えなくなり、結球しない、根が太らないという結果になります。こぶは進行すると腐って崩れ、その中の病原菌が土に戻ります。
なぜ出るのか
原因は土の中に住む病原菌で、水とともに動いて根から侵入します。発生を強く左右するのが、土の酸度と水はけです。酸性の土(pHが低い土)で多発し、土のpHが7.2以上のアルカリ寄りになると発生が大きく減ることが、各県の防除指針や種苗各社の資料で共通して示されています。水はけの悪い畑、地下水位の高い畑、畝間に水がたまる畑では、病原菌が水に乗って畝全体に広がります。そして、アブラナ科を続けて作るほど、土の中の病原菌が増えていきます。発病株を畑に残したり、その土がついた靴や農具でほかの畑を歩いたりすることでも広がります。
出さないために
いま出ている株を治す方法はありません。発病株は根ごと抜き取り、畑の外に持ち出して処分してください。こぶを畑に残す、あるいは堆肥にすることは絶対に避けます。そのうえで、次の作に向けて畑を整えます。柱は3つで、①石灰資材で土の酸度をpH7前後まで上げる、②高畝と排水溝で水はけを改善する、③アブラナ科以外の作物を間にはさんで輪作することです。とくに①は効果がはっきりしており、植えつけの2週間以上前に酸度を測って調整するのが基本になります。また、根こぶ病に対して「抵抗性」と表示された品種があります。毎年出る畑では、こうした品種を選ぶことが現実的な対策になりますが、抵抗性品種でも酸度と排水の対策を怠ると発病しますので、組み合わせて使ってください。
酸度調整の実際についても触れておきます。まず、市販の土壌酸度計や試薬で、畑の数か所を測ります。畑の中でも場所によって酸度は違うので、1か所だけで判断しないでください。pHが6を下回っていれば、根こぶ病が出やすい酸性の土です。石灰資材には効きの穏やかなもの(苦土石灰・有機石灰など)と、効きの速いもの(消石灰など)があり、いずれも植えつけの2週間以上前に全面にまいてよく耕し、土となじませます。pHを1上げるのに必要な量は土の種類で大きく違い、砂質の畑は少量で動き、粘土質や腐植の多い畑は多く要ります。一度に大量に入れるのではなく、まいて2週間後にもう一度測り、足りなければ次の作でまた足す——という数作かけて整えるやり方が、入れすぎの失敗を防ぎます。石灰と窒素肥料を同時に施すと窒素が揮散して効きが落ちるので、元肥は石灰から1週間ほどあけて入れてください。
症状が出た株は救えませんが、今年の秋に発病株をきちんと持ち出し、酸度と排水を整えておけば、来年の被害は目に見えて減らせます。逆に、「今年はもうダメだから」と株を放置すると、こぶの中の病原菌が土に戻って翌年さらに増えます。抜いて出す——これが、いちばん効く対策です。
この3つ以外にも ― 秋冬野菜で見かける病気
軟腐病・べと病・根こぶ病のほかにも、温暖地の秋作で目にする病気があります。症状と、いま挙げた3つとの見分け方を簡単に整理しておきます。
なお、ここに挙げた病気は温暖地の秋作で相談の多いものに絞っており、地域や年によって別の病気が問題になることもあります。迷ったときの見分けの順番は、①においがするか(軟腐病)、②葉裏にカビがあるか(べと病・白さび病)、③根を抜いてこぶがあるか(根こぶ病)、④片側だけ黄化して維管束が褐変しているか(萎黄病)です。この4つを順に確認すれば、秋冬野菜の主な病気はほぼ切り分けられます。
症状から病気を絞り込む早見表
畑で株の異変に気づいたとき、「どこを見れば何が分かるか」を1枚にまとめました。まず地上部、次に根、という順で確認してください。
| 見えている症状 | 次に確認すること | 考えられる病気 | まずやること |
|---|---|---|---|
| 株元・外葉のつけ根が水浸状に変色 | 腐敗臭があるか | 軟腐病 | 株ごと抜いて持ち出す。周囲の株に触れない |
| 葉表に角ばった黄色い斑点 | 葉裏に白〜灰色のカビがあるか | べと病 | 発病葉を除去。換気と株間の確保 |
| 日中しおれて夕方回復、生育停止 | 株を抜いて根にこぶがあるか | 根こぶ病(こぶがなければ水不足・根の食害) | 根ごと持ち出す。次作に向け酸度・排水を改善 |
| 株の片側だけ黄化・生育停止 | 茎を切って維管束が褐変しているか | 萎黄病 | 持ち出す。次作は輪作・抵抗性品種 |
| 葉の縁からV字に黄化、葉脈が黒い | 複数の株に同時に出ているか | 黒腐病 | 発病葉を除去。雨のあとに株に触れない |
| 葉がまだら模様で縮れる | アブラムシがいるか | モザイク病 | 株を抜く。ネットとマルチでアブラムシを防ぐ |
| 下葉から順に黄化、株全体の緑が薄い | 斑点・カビ・こぶがないか | 病気ではなく肥料切れの可能性 | 結球前なら追肥。先週の記事を参照 |
見分けるときは、1株だけを見ずに、畝全体の「出方」も手がかりにしてください。畝の低い側や水のたまる場所に集中して出ていれば、排水に関わる病気(軟腐病・根こぶ病)の可能性が高まります。畝の風下側や、葉が込み合った場所から広がっていればべと病や灰色かび病を、飛び飛びに1株ずつ出ていれば土壌病害や虫の媒介するウイルス病を疑います。病気の名前が分からなくても、「どこに出ているか」を見れば、水・風・土のどれが関わっているかが見えてきて、対策の方向が決まります。
表の最後の行にあるとおり、「黄色い」だけでは病気と決められません。下葉から均一に黄化しているだけで斑点もカビもこぶもなければ、病気ではなく肥料切れであることのほうが多いのです。先週の追肥の記事とあわせて、まず病気かどうかを切り分けてから手を打ってください。
病気を「出さない畑」をつくる4つの柱
ここまで見てきた病気は、それぞれ原因も症状も違いますが、予防のやり方はほとんど重なっています。個別の病気を覚えるより、この4つの柱を畑に組み込んでおくほうが、結果として広く効きます。
畝は20cm以上の高さに。畑の周囲と畝間に水の逃げ道をつくり、雨のあとに水が残らないようにします。軟腐病・べと病・根こぶ病のすべてに効く、いちばん基本の対策です。
株間を守り、窒素を効かせすぎず、葉が乾く時間をつくります。ネットは葉に密着させず、株が大きくなったら高くする。べと病・灰色かび病・軟腐病を抑えます。
同じ畝でアブラナ科を続けると、根こぶ病・萎黄病の病原菌が年々増えます。間にマメ科・ネギ類・イネ科(葉物以外)などをはさみ、できれば2〜3年あけます。
発病した株・葉は畑の外へ。収穫後の残渣もすき込まずに片づけます。病原菌の「来年の種」を減らす、地味ですがもっとも確実な作業です。
泥はねを防ぐ手立ても、4つの柱を支える大事な要素です。雨のしぶきが土から葉へ病原菌を運ぶのは、軟腐病・黒腐病・黒斑病に共通する感染経路で、株元の土がむき出しになっている畝ほど発生が多くなります。マルチを張っている畝はこの点で有利です。マルチのない畝では、株元にわらやもみ殻、刈り草を敷くだけでも、泥はねと土の乾湿の差をかなり抑えられます。また、外葉が土に触れて汚れやすいレタスやハクサイでは、敷きわらが外葉の汚れと腐りを防ぐことにもつながります。手元にある材料で構いませんので、株元の土を露出させない工夫をしてみてください。
この4つに加えて、土の酸度を植えつけ前に整えることが、根こぶ病の出る畑では決定的に効きます。酸度は市販の簡易測定器で十分に測れます。「毎年、秋になるとアブラナ科がしおれる」という畑は、一度測ってみてください。多くの場合、pHが6を下回っています。
持ち込まない ― 靴・道具・育苗土・種の衛生
土に残る病気は、畑の中で増えるだけでなく、外から持ち込まれて始まります。根こぶ病の出たことのない畑に、ある年から突然出るようになった——そういうとき、原因はたいてい「持ち込み」です。経路は4つあります。
靴と農具についた土。根こぶ病や萎黄病の病原菌は、土に混じって移動します。発病した畑を歩いた靴のまま別の畑に入る、同じ鍬や管理機を使い回す、こうしたことで畑から畑へ運ばれます。発病歴のある畑と健全な畑を行き来する場合は、靴底の土を落とし、農具は水で洗ってから移動する習慣をつけてください。ご近所どうしで農具を貸し借りするときも同じです。
ハサミと手。軟腐病・黒腐病などの細菌病は、収穫や葉かきのときのハサミや手を介して、株から株へ広がります。発病株に触れたあとは手を洗い、ハサミは株ごとに、少なくとも発病株に使ったあとには消毒用アルコールで拭いてください。「病気の株はいちばん最後に触る」という順番を決めておくだけでも、広がり方が変わります。
自家育苗の土。ご自分で苗を育てる場合、育苗用の土に畑の土を混ぜないことです。発病歴のある畑の土を育苗に使うと、苗の根鉢ごと病原菌を別の畝へ運ぶことになります。育苗には市販の育苗用土を使い、使い終わった土を畑に戻すときも、発病した畝の土とは分けてください。
種子。黒腐病など一部の病気は種子に付着して伝わることがあります。市販の種子の多くは消毒処理が施され、袋にその旨が表示されています。自家採種した種子をまく場合は、この経路があることを知っておいてください。
秋雨・台風のあとにやること ― 48時間の対応
秋冬野菜の病気が動くのは、まとまった雨のあとです。9月下旬から10月は、秋雨前線と台風で、温暖地でも数日続く雨や強風が何度かあります。雨が上がってからの2日間に何をするかで、その後の発病量が変わります。順番にご説明します。
雨が上がったら、まず畝間の水を抜きます。畝間や畑の隅に水が残っていれば、鍬で溝を切って外へ逃がします。水が滞っている時間が長いほど、根が傷み、軟腐病や根こぶ病の病原菌が水に乗って広がります。この作業は、株を見るより先に行ってください。
次に、株に触れずに全体を見ます。雨のあとの葉はぬれていて、このときに株に触れたり畝に入ったりすると、手や靴で病原菌を広げてしまいます。畝の外から、倒れた株、しおれた株、変色した株がないかを確認します。強風で葉がこすれて傷ついた株は、軟腐病や黒腐病の入り口ができている状態なので、とくに注意して見ておきます。
土が乾きはじめたら、倒れた株を起こし、傷んだ葉を取り除きます。倒れた株は株元に土を寄せて立て直します。折れた葉、泥をかぶった外葉、傷が大きい葉は、乾いた日に取り除いて畑の外へ出します。ハサミを使う場合は、株ごとに刃を拭くか、消毒用のアルコールで拭きながら進めると、病気の株から健全な株への持ち込みを減らせます。
被覆資材を点検します。防虫ネットを掛けている畝で強風にめくれていれば、その間に虫が入っている可能性があります。裾を埋め直したうえで、数日は芯と葉裏をていねいに見回ります。マルチが破れて泥はねの原因になっていれば、補修するか、株元にわらやもみ殻を敷いて代用します。掛けていない畝も、強風のあとは葉の傷から病気が入りやすいので、同じように芯と葉裏を見ておきます。
2〜3日後にもう一度見回ります。病気の症状は、雨のあとすぐには出ません。感染から症状が見えるまでに数日かかるためです。雨から2〜3日たったころに、先ほどの「見回りたい4か所」を確認してください。ここで初発を見つけて発病葉・発病株を持ち出せるかどうかが、畝全体に広がるかどうかの分かれ目になります。
なお、雨のあとの追肥は急がないでください。肥料が流れて葉色が薄くなったように見えても、根が傷んでいる状態で肥料を効かせると、かえって株を弱らせます。まず排水と見回り、追肥はその後、株が動き出してから——この順番が、雨のあとの畑を守る基本です。
ぬれた葉に触れ、ぬれた畝間を歩くことが、病気を畑全体に「配って歩く」ことになります。雨上がりに畑に入りたくなる気持ちは分かりますが、水を抜く作業以外は、土の表面が乾くまで待ってください。この我慢が、軟腐病・べと病・黒腐病のいずれにも効きます。
薬剤について、当店の考え方
この記事では薬剤の名前を出していません。理由は二つあります。ひとつは、農薬の登録内容(使える作物・時期・回数)は変更されることがあり、記事に書いた情報がいつまでも正しいとは限らないこと。もうひとつは、秋冬野菜の病気の多くは、薬剤より栽培管理のほうが効くからです。
実際、根こぶ病は酸度と排水、軟腐病は傷と窒素、べと病は葉のぬれ時間——というように、それぞれの病気には「畑の側の原因」がはっきりあります。そこを変えずに薬剤だけで抑えようとすると、毎年同じ時期に同じ病気と向き合うことになります。薬剤は、畑の条件を整えたうえで、それでも抑えきれない年や畑で補助的に使うもの、と位置づけていただくのがよいと考えています。
そのうえで、薬剤を使う場合の原則だけお伝えします。細菌の病気(軟腐病・黒腐病)は、発病してからの治療が効きにくく、予防的に使うのが基本です。カビの病気(べと病など)は、初発を見つけた段階で早めに対処するほど効果があります。根こぶ病は、植えつけ前に土に処理するタイプの資材が中心で、植えてからの対処はありません。どの場合も、その作物・その病気に登録があるかを最新のラベル表示で確認し、収穫前日数と使用回数を守ること。判断に迷うときは、お住まいの地域のJAや病害虫防除所が出している防除暦を参照してください。当店でもご相談を承ります。
2026年の秋、病気の面でとくに注意したいこと
今年の秋作を取り巻く条件を、病気の観点から整理しておきます。3点あります。
ひとつめは、夏の高温の影響です。2026年の夏は各地で高温が続き、9月に入っても残暑が長引きました。高温の年は、萎黄病のように地温が高いと活動が活発になる土壌病害が、秋作の早い作型で出やすくなります。また、残暑の中で定植した株は活着に体力を使っており、根の張りが例年より遅れている畑もあるはずです。根が弱い株は、雨のあとの滞水や軟腐病の侵入に対して抵抗力が低いので、排水対策をいつもの年より念入りにしておく価値があります。
ふたつめは、残暑と秋雨の重なりです。気温が高いうちに秋雨が来ると、軟腐病にとって最適な高温多湿の条件がそろいます。さらに10月に入って気温が下がってくると、今度はべと病の適温帯に入ります。つまり今年の10月は、前半は軟腐病、後半はべと病という具合に、警戒する相手が切り替わっていく可能性があります。9月中は株元と外葉のつけ根を、10月中旬以降は葉裏を、重点的に見てください。
みっつめは、虫が多い年は細菌病も多い、ということです。当店の8月末の記事でお伝えしたとおり、夏が高温少雨だった年は秋の害虫の発生が多くなる傾向があります。虫の食害跡は、そのまま軟腐病や黒腐病の入り口です。虫の見回りを、追肥や土寄せで手が忙しくなるこの時期も緩めないこと(防虫ネットを掛けている畝では、開け閉めのたびに閉め忘れがないかも)。それが、虫と病気の両方を抑える、今年いちばんの要点だと考えています。
よくある質問
Q. 「耐病性」と表示された品種なら、病気の対策はいりませんか?
いりますが、軽くできます。種袋やカタログの耐病性表示は、特定の病気に対して「かかりにくい」「かかっても軽い」ことを示すもので、まったくかからないという意味ではありません。また、表示されている病気以外には効きません。「べと病に強い」品種でも根こぶ病には無関係です。毎年出る病気がはっきりしている畑で、その病気に対する表示のある品種を選び、排水・酸度・輪作の対策と組み合わせる——これが耐病性品種のいちばん賢い使い方です。当店の7月の記事「耐病性と抵抗性の違い」で、表示の読み方をくわしく整理しています。
Q. 病気の株を抜いたあと、その場所に植え直してもよいですか?
病気によります。軟腐病やべと病のように、主に地上部で広がる病気なら、株を持ち出して周囲を乾かせば植え直しは可能です(時期が適期の範囲内であれば)。ただし、根こぶ病や萎黄病のように土に残る病気の場合、同じ場所にアブラナ科を植え直すのは避けてください。病原菌が集中している場所に、いちばん弱い幼苗を植えることになります。その畝はアブラナ科以外に切り替えるか、いったん空けて次作までに酸度と排水を整えるのが安全です。
Q. 石灰をまけば根こぶ病は出なくなりますか?
大きく減らせますが、それだけでは不十分です。土のpHを7以上に保つことで発生はかなり抑えられますが、水はけが悪ければ病原菌は水に乗って動きますし、連作で菌の密度が高くなっていれば酸度だけでは押さえきれません。酸度調整・排水改善・輪作・発病株の持ち出しを組み合わせて、数年かけて菌の密度を下げていくのが現実的な道筋です。また、石灰の入れすぎは別の作物で微量要素の不足を起こすので、必ず酸度を測ってから、必要な分だけ施してください。
Q. 発病した株や葉を堆肥にしてもよいですか?
おすすめしません。家庭菜園や小規模な畑の堆肥づくりでは、病原菌を死滅させるほどの高温(60℃以上が長期間)を安定して保つのが難しく、堆肥といっしょに病原菌を畑に戻すことになりかねません。とくに根こぶ病のこぶ、軟腐病で溶けた株は、必ず畑の外へ出して処分してください。健全な残渣と病気の残渣を分ける手間が、翌年の畑を守ります。
Q. 畑が狭くて、アブラナ科以外を作る余地がありません。輪作は無理ですか?
完全な輪作が難しい畑は多いと思います。その場合でも、できることはあります。同じ畝に同じ品目を続けないだけでも、特定の病原菌が集中するのを遅らせられます。ハクサイの畝を翌年はダイコンに、その翌年はホウレンソウ(アブラナ科ではありません)やタマネギに、というように、畝単位で回していく方法です。また、春夏にマメ科やウリ科、ナス科を作り、秋冬だけアブラナ科にするという年内の回し方も、菌の密度を下げる助けになります。そして、輪作ができない畑ほど、酸度調整・排水・発病株の持ち出しを徹底する必要があります。輪作は対策のひとつであって、唯一の手段ではありません。
Q. 収穫したハクサイを保存していたら、中から腐ってきました。畑の病気ですか?
その可能性が高いです。畑で軟腐病の細菌が外葉のつけ根や結球部にわずかに入っていた株は、収穫時には見た目が健全でも、保存中に腐敗が進みます。対策は畑の段階での軟腐病対策に尽きますが、保存の面では、収穫は晴天が続いて株が乾いているときに行い、外葉に傷のある株、株元がやわらかい株は保存に回さず早めに食べることです。保存中は風通しのよい冷暗所で、新聞紙で包んで立てておくと、腐敗の進みを遅らせられます。腐り始めた株は、ほかの株にうつる前に取り除いてください。
まとめ
- 病気は「水・傷・土」から入る。排水をよくし、虫の食害と作業の傷を減らし、土の酸度と輪作を整える。対策は発病後ではなく、植える前と広がる前に打つ。
- 軟腐病は「におい」、べと病は「葉裏のカビ」、根こぶ病は「根のこぶ」で見分ける。においがあれば株ごと持ち出す、カビがあれば葉を除去、こぶがあれば根ごと持ち出して次作に備える。
- 「黄色い」だけでは病気と決めない。斑点・カビ・こぶ・片側黄化・維管束の褐変を順に確認する。均一な黄化で異常がなければ肥料切れの可能性が高い。
- 発病株・残渣は畑の外へ。堆肥にしない。病原菌の「来年の種」を減らす、もっとも確実な作業。とくに根こぶ病のこぶは絶対に畑に残さない。
- 耐病性品種は「対策との組み合わせ」で使う。表示された病気にしか効かず、かからないわけではない。毎年出る病気に合わせて選び、排水・酸度・輪作と併用する。
秋冬野菜の病気は、出てから対処できることが少ないぶん、「出さない畑をつくる」ことがそのまま対策になります。そしてその中身は、高畝・株間・窒素の加減・道具の清潔・残渣の片づけといった、栽培の基本そのものです。特別なことをするというより、基本を省かないこと。それが、毎年の被害をいちばん確実に減らします。
この記事は、当店の秋のブログ「秋冬野菜の初期害虫対策」(植えた株を虫から守る)、「秋冬野菜の追肥・土寄せ・結球期の管理」(結球前に育てきる)に続く、"守りきる"段階の記事です。虫を防ぎ、窒素を効かせすぎず、水をためない——3本の記事でお伝えしてきた管理は、それぞれが病気の予防につながっています。
「うちの畑では毎年この病気が出る」「この症状は何の病気か分からない」といったご相談も承っております。症状の写真と、畑の水はけや前作の情報をお伝えいただけると、原因を絞り込みやすくなります。どうぞお気軽にお声がけください。
