秋冬野菜の初期害虫対策 ― 定植・播種からの2週間が勝負。5つの手を組み合わせて守りきる

 

お盆を過ぎて、ハクサイやキャベツの苗を畑に下ろした。ダイコンの種をまいた。ようやく秋作が動き出した——という方が多い時期です。

ところが、この時期にいちばん多い失敗は、暑さでも水切れでもありません。植えたばかりの株が、数日で虫に食われて立ち直らないことです。芯を食われたハクサイは結球しませんし、双葉のうちに葉を食い尽くされたダイコンは、そのまま消えてしまいます。

そして厄介なことに、8月下旬から9月上旬は、秋冬野菜を狙う虫の飛来がちょうど重なる時期にあたります。2026年の夏は各地で高温が続きました。高温少雨の年は発生が多くなる傾向があると、県の病害虫防除所や病害虫図鑑で共通して指摘されています。今年は例年以上に警戒したい秋です。

この記事では、定植・播種の直後から2週間をどう守り切るかを整理します。最初に申し上げておきたいのは、初期害虫への手立てはひとつではないということです。資材で覆うことばかりが対策のように語られがちですが、実際に毎年きちんと結果を出しておられる畑は、性質の違う手をいくつも重ねています。その手立てを5つに整理してご紹介します。

飛んでくる前に
寄せつけない
畑の段取りで飛来を減らす
飛んできても
入れない
資材で物理的に遮る
入られても
早く見つける
見る場所を決めておく

※この3つに「手で減らす」「畑の味方を減らさない」を加えた5つが、この記事の骨組みです。


秋冬野菜は「植えてからの2週間」で決まります

まず、なぜこの時期の虫がこれほど重大なのかを共有させてください。理由は単純で、株が小さいからです。

定植直後のハクサイやキャベツの苗は本葉が4〜6枚程度、ダイコンやカブは双葉から本葉が出たばかりです。この状態の株にとって、葉の一枚一枚は「予備」ではなく「全財産」にあたります。大きく茂った夏野菜なら多少食われても収穫までたどり着けますが、幼苗期の食害には代わりがありません。

さらに深刻なのが、生長点をやられた場合です。アブラナ科野菜の芯には、これから展開するすべての葉のもとが詰まっています。ここを食害されると、「芯止まり」といって株の伸びが止まります。ハクサイやキャベツでは脇芽が出ることはあっても正常な結球はまず望めず、ダイコンではそのまま枯死することも珍しくありません。

そして、まき直し・植え直しの猶予がほとんどないのもこの時期の制約です。温暖地の秋冬野菜には適期があり、9月中旬を過ぎてからまき直すと、冬までに株が仕上がらない品目が出てきます。夏野菜なら「今年はダメでも来年」で済む話が、秋作では「今年の分がまるごと消える」ことにつながります。

加えて、この時期の株は根がまだ張っていません。地上部を食われたとき、根から養分を持ち出して立て直す余力が、この段階の株にはほとんどないということです。残暑のなかで活着に体力を使っているところに食害が重なると、株はあっけなく力尽きます。

つまり、秋冬野菜の初期害虫対策は「見つけてから対処する」だけでは間に合わないということです。虫が来る前提で、来ても被害が広がらない状態を最初に作っておく。これが2026年の秋を乗り切るための基本設計になります。

【注目ポイント】防除の順番が、夏野菜とは逆になります
夏野菜では「発生を確認してから対処する」で間に合う場面が多くあります。一方、秋冬野菜の初期は「発生を確認した時点で、すでに手遅れ」という場面が出てきます。定植・播種の作業と同じ日に守りの手当てまで終えるくらいの前倒しが、結果的にいちばん手間の少ないやり方です。

2026年の秋は、虫が多くなる条件がそろっています

秋冬野菜を狙う虫には、それぞれ発生の山があります。そして8月下旬から9月上旬にかけては、その山がいくつも重なるという、栽培者にとっては最も分が悪い時期です。

特に注意したいのが、アブラナ科野菜の芯を食害するシンクイムシ(ハイマダラノメイガ)です。各県の発生予察情報では、成虫のピークがおおむね8月下旬〜9月上旬とされ、その後も10月上旬頃まで発生が続くと注意喚起されています。まさに、秋冬野菜の育苗と定植の真っ最中にぶつかる形です。

加えて、発生量を左右するのが夏の気象です。夏季が高温少雨だった年は多発しやすい——この記述は、複数の県の病害虫情報や図鑑に共通して見られます。同じ傾向は、根を食害するキスジノミハムシについても指摘されています。2026年の夏を思い返せば、今年の警戒レベルは明らかです。

もうひとつ、暖地ほど虫の年間発生回数(世代数)が多く、活動する期間も長いという事情があります。平地ではシンクイムシが年6世代前後を繰り返すとされます。西日本の平坦地では、「涼しくなれば虫は減る」という感覚は当てになりません。実際には、11月に入っても食害が続く年があります。

2026年秋・初期害虫の警戒サマリー
警戒の山
8月下旬〜9月上旬。10月上旬頃まで継続
増える条件
夏が高温少雨だった年(2026年は該当しやすい)
対象作物
アブラナ科全般。特に幼苗期の株
被害の型
生長点の食害(芯止まり)・葉の食い尽くし・根の傷
地域差
暖地ほど世代数が多く、晩秋まで活動が続く
※各県の病害虫防除所は発生予察情報をウェブで公開しています。お住まいの地域の実測データを確認すると、防除のタイミングを具体的に決められます。

近年は夏の高温が常態化しつつあります。秋作の初期害虫対策は、毎年の標準装備として組み込んでおくほうが現実的です。


この時期に来る虫を、5つのグループで覚える

対処法の話に入る前に、相手の顔ぶれを押さえておきます。名前を個別に覚えようとすると際限がありませんが、「どこを、どう食べるか」で5つに分けると、畑で見たときの判断がぐっと速くなります。

芯を
食う
シンクイムシ類(ハイマダラノメイガ)

幼虫が中心の葉を糸で綴り合わせ、その中に潜って生長点を食害します。芯の付近に細かい糞が見えたら、ほぼこれです。被害が出るのは生育初期の株にほぼ限られるため、逆に言えばいま最も警戒すべき虫です。潜り込んでからでは薬剤もかかりにくく、入れないことと早く見つけることの両方が要になります。

葉に
アオムシ・コナガ

アブラナ科の定番です。アオムシ(モンシロチョウの幼虫)は緑色で目立ち、葉に大きめの穴をあけます。コナガはより小さく、若い幼虫は葉裏の薄皮を残して食べるため、葉が白くかすれて見えるのが特徴です。薬剤抵抗性が発達しやすく、それ以外の手立てを厚くしておく価値が高い相手です。

集団で
食う
ヨトウ類(ハスモンヨトウなど)

卵を数十〜数百個の塊で産むのが最大の特徴です。孵化した若い幼虫は葉裏に集団でいて、薄皮を残して食べるため、離れて見ると数枚の葉だけが白く浮いて見えます。この段階で葉ごと取り除けば、数百頭をまとめて片づけられます。大きくなると分散し、夜間に活動して薬剤も効きにくくなります。

汁を
吸う
アブラムシ類

新芽や葉裏に群がって汁を吸います。直接の食害よりも問題なのが、ウイルス病を運ぶことです。羽のある個体が飛来して定着するため、飛び込みを止められるかが分かれ目になります。秋は特に発生が多く、幼苗期に感染すると、その株は最後まで正常に育ちません。

根も
食う
キスジノミハムシ

体長3mmほどの小さな甲虫で、触れるとノミのように跳ねます。成虫は葉に数mmの穴を無数にあけ、幼虫は土の中で根を食害します。ダイコンやカブでは収穫物の表面に傷やかさぶた状の症状が残り、商品価値を大きく下げます。暖地で発生が多く、体が小さいぶん、目の粗い資材はすり抜けます。

※このほか、地際で苗を切り倒すネキリムシ類も、定植直後に被害が出やすい相手です。

この5つが厄介なのは、発生の時期が大きく重なっている点です。8月下旬から9月にかけては、ほぼ全部が同時に活動しています。「今年はコナガだけ気をつければいい」という年はまずありません。相手が複数である以上、こちらの手も一本槍では足りない——このあとの章の前提です。

そしてもうひとつ、被害の出かたに時間差があります。葉の穴はすぐ分かりますが、シンクイムシは芯に潜るので、気づいたときには生長点が終わっていることがあります。キスジノミハムシの幼虫による根の食害にいたっては、収穫まで気づけません。目立つ被害から順に手を打っていると、いちばん重い被害を見落とします。芯の確認を最優先にしてください。

【注目ポイント】同じ「穴」でも、犯人が違えば手当てが違います
数mmの小さな穴が無数にあいていればキスジノミハムシ、大きめの穴ならアオムシ、葉が白くかすれていればコナガかヨトウ類の若齢幼虫です。穴の大きさと数を見るだけで、当たりはかなり絞れます。そして、芯に糞が見えたときだけは別格に急いでください。生長点は取り返しがつきません。

対処法は5つ。ひとつに頼らず、組み合わせる

相手の顔ぶれが見えたところで、守り方に入ります。初期害虫への手立ては、大きく5つに整理できます。そしてこの5つに主役・脇役の別はなく、どれも単独では穴があります。

いちばんよくある遠回りが、「これさえやれば大丈夫」という決定打を探してしまうことです。飛来を減らす手は、すでに苗についていた卵には無力です。覆う手は、内側に入り込んだ一頭には何もできません。穴の位置が違う手を重ねることで、はじめて全体の守りが固くなります。「7割の手を3つ重ねる」ほうが、10割の手をひとつ探すより確実です。

寄せつけない
畑の段取りで、飛来そのものを減らす

前作の残渣を片づける、周囲のアブラナ科の雑草を抜く、まき時を少しずらす。費用はほぼゼロで、効果は畑全体に及びます。効き方はゆるやかで、これだけで幼苗期は守り切れません。他の4つの効きを底上げする土台です。

入れない
被覆資材で、物理的に遮る

防虫ネット、不織布、寒冷紗、マルチ。効き方はいちばん直接的で、幼苗期には頼りになります。一方で、5つのうち唯一まとまった費用と手間がかかり、張り方を誤ると効果がほぼゼロになる手でもあります。

早く見つける
見回りで、被害を小さいうちに止める

見る場所を決めてしまえば、1畝あたり数十秒。費用はゼロ、必要なのは時間だけです。入られること自体は防げませんが、入られたあとの被害の大きさは、この手がほぼ単独で決めます。

手で減らす
卵と若齢のうちに、まとめて取る

原始的ですが、確実性という点ではいちばん信頼できます。薬剤が届かない相手にも、資材をすり抜けた個体にも効きます。弱点は労力で、株数が増えると回らなくなります。卵のうち・若齢のうちに手を出せるかどうかで、必要な時間が何十倍も変わります。

味方を減らさない
天敵の働きを、こちらから壊さない

テントウムシ、ヒラタアブの幼虫、クモ類、寄生蜂。放っておいても害虫の数を抑えてくれる存在です。効き始めに時間がかかるので幼苗期の主役にはなりませんが、秋作の中盤以降を支えるのはこの働きです。減らさない配慮の話になります。

※これに加えて、必要な場合は薬剤という手があります。5つと並べる6つめではなく、5つを踏まえたうえで判断する手段として、後の章で扱います。

この5つを全部きっちりやろうとすると、ほとんどの方が息切れします。大事なのは、自分の畑の条件に合わせて「どれを厚くするか」を決めることです。目安を挙げます。

株数が少ない家庭菜園なら、④が現実的に回ります。数十株なら手で取る作業は数分です。資材を最上位の細かさで揃えるより、③と④に時間を配るほうが費用対効果は高くなります。逆に面積が広い畑では④は回りません。①と②に比重を置き、③は出やすい畝を決めて重点的に見るやり方に切り替えます。

無農薬・減農薬の方針なら、②を厚くし、③の頻度を上げるのが基本です。週末しか畑に行けない方も同じで、③が薄くなるぶんを①と②で補います。逆に、通える頻度が高い方は、②に費用をかけすぎなくても③と④で補えます。

自分の畑に合う対処法を選ぶ前の4項目
✓ その畑で毎年出る虫は何か
✓ 何株あるか(手で回れる規模か)
✓ 畑に通える頻度と、行ける時間帯
✓ 薬剤を使う方針かどうか
4つのうち、いちばん判断を左右するのは「毎年出る虫」です。畑ごとに顔ぶれは違います。全国向けの情報より、去年いちばん困った虫を基準に組み立てるほうが確実です。

ここから、5つの手をひとつずつ見ていきます。自分の畑ではどれが厚くできて、どれが薄くなるのか——それを意識しながら読み進めてください。


①寄せつけない ― まき時と畑の段取りで、飛来そのものを減らす

ひとつめは、そもそも虫を呼び込まない段取りです。費用がかからないわりに、畑全体に効くのがこの手の特徴です。8月下旬のこの時期、まだ手をつけていない畝があるなら、そこは段取りしだいで被害を大きく減らせます。

前作の残渣を片づけてから植える。夏野菜の残渣や刈り倒した草を畝の脇に積んでいると、そこが虫の隠れ家になります。特にヨトウ類は、こうした場所で蛹になって次の世代につながります。畝を作る前に、周辺をきれいにしておくことが、地味ですが確実に効きます。

周囲のアブラナ科の雑草を抜いておく。畑の周りに生えているナズナやイヌガラシなどのアブラナ科の雑草は、害虫にとっては同じごちそうです。ここで増えた虫が、そのまま畝に移動してきます。畝の中だけを守っても、供給源が隣にあっては切りがありません。定植の前に、少なくとも畑の縁までは片づけておいてください。

畝の並べ方を決めておく。アブラナ科の畝をまとめて配置すれば、守りの作業もまとめて済みます。散らばっていると手間が増え、そのぶんどこかで手を抜くことになります。作業のしやすさは、そのまま防除の精度につながります。収穫や間引きの近い品目を隣り合わせにすれば、畝を開ける日もそろえられます。

苗を植える前に、芯と葉裏を見る。育苗の段階ですでに卵を産みつけられていることがあります。気づかずに定植して覆うと、虫を囲い込んで育てることになります。10秒で終わるわりに、効果の大きい確認です。

まき時を数日ずらす、複数回に分けてまく。飛来のピークを外せれば、初期被害は減らせます。ただし秋冬野菜には適期があり、使えるのは数日から1週間程度の調整に限られます。そのうえで有効なのが、複数回に分けてまくという考え方です。一度に全部まいて全滅するリスクを、時期の分散で下げられます。1週間ずらして2回に分けるだけでも、保険としての効果は十分にあります。

反射資材で、飛んでくるアブラムシを迷わせる。羽のあるアブラムシは、下から反射する光を嫌います。畝面に銀色系のマルチを敷く、畝の肩に銀色のテープを張るといった方法で、着地を減らせます。ただし定着した個体には効きません。

また、畑を空けている期間に土をリセットする方法については、当店ブログの8月上旬の記事で扱っています。あわせてご覧いただくと、この時期の畑の使い方が整理しやすくなるはずです。


②入れない ― 被覆資材の選び方と、効果を決める張り方

ふたつめは、物理的に遮る手です。虫が来られなければ被害は起きず、幼苗期にはこの手がいちばん直接的に効きます。ただし、覆う資材は一種類ではありません。

防虫ネットは虫の遮断が目的で、目合い(網目の細かさ)の表示が性能を決めます。不織布は保温・保湿が主目的で、残暑期に葉へ密着させると内部が高温になりがちです。寒冷紗は遮光・遮熱が主目的で、目が粗く小型の虫を通す製品もあります。マルチは地温と雑草の管理用ですが、銀色系は前章のとおり飛来を減らします。

幼苗を守るなら、目合いの表示がある防虫ネットを、支柱を立ててトンネル状に使うのが基本形です。目合いと防げる虫の関係は、資材メーカーや各県の指針を総合すると次のとおりです。

目合い 主に防げる害虫 残暑期の注意
0.4mm アザミウマ類、コナジラミ類 通気性が大きく落ちる
0.6mm ハモグリバエ類、キスジノミハムシ 根の傷が問題になる畑向き
0.8mm アブラムシ類 防虫と通気のバランスが良い
1.0mm コナガ、アオムシ、カブラハバチ、ヨトウムシ類 残暑期でも風が通る。汎用性が高い
2〜4mm モンシロチョウ、ヨトウガ類などの大型の成虫 通気は最良。小型害虫は素通り

細かいほど良い、ではありません。細かいほど風が通らず、内部の気温が上がります。8月下旬からの定植・播種なら、防虫ネットは0.8〜1.0mmを基本に。この時期に怖いシンクイムシ、コナガ、アオムシ、ヨトウ類の成虫は、この範囲で止まります。根の傷やアブラムシが毎年問題になる畑は0.6mmですが、換気の工夫とセットで。

そして、ここからが本題です。どれほど細かい目合いでも、隙間がひとつあれば効果はほぼゼロ。「覆ったのに食われた」というご相談の多くは、張り方に原因があります。

裾は「押さえる」のではなく「埋める」

裾を石やパイプで押さえただけでは、必ず隙間が残ります。防虫ネットの裾は、土に10cm程度かぶせて埋めてください。必要な幅は「畝幅+トンネルの高さ×2+左右40cm程度」。「ちょうどの幅」では埋める分が足りません。妻面も、束ねて縛るだけでは隙間が残ります。

葉が資材に触れない高さと幅をとる

葉が資材に接していると、外から産卵されます。チョウやガは網越しに葉の位置を認識し、上から卵を産みつけます。孵化した幼虫は網目を通り抜けます。2〜3週間後の株の大きさを想定して、肩と天井に余裕をとってください。

開閉のルールも決めておきます。間引きや追肥で開ける日はたびたびあり、虫が入るのはたいていその日です。作業は手早く、その日のうちに閉めてください。

ここで、5つの手に共通する落とし穴をまとめておきます。

資材も道具も、植えたあとに買いに行く

最も多い失敗で、その数日で産卵されます。資材は定植・播種の前に運んでおき、植える作業と同じ日に守りまで終えるのが基本です。

隙間を残したまま「覆ったつもり」になる

防虫ネットの裾を石で置いただけ、妻面を束ねただけ。押さえているつもりでも、間には必ず隙間があります。土をかぶせて埋めるのが基本です。

苗といっしょに虫を持ち込む

育苗中に産卵された卵に気づかず定植すると、覆いが虫を守る囲いになります。定植前に芯と葉裏の確認を習慣に。

覆ったあと、中を一度も見ない

②で安心して③が抜け落ちるパターンです。入られたときに気づけるかが、被害の大きさを分けます。週に2回はめくって確認を。


③早く見つける ― 見回りは「見る場所」を決めておくと速い

3つめは見回りです。費用はかかりませんが、結果への効き方は5つのなかでも大きい部類に入ります。とはいえ、「よく観察しましょう」とだけ言われても、何を見ればよいのか分からないまま畑を一周して終わり、ということになりがちです。見る場所を4か所に絞ってしまえば、1畝あたり数十秒で確認できます。

見る場所 見つかるサイン 疑われる虫と対処
芯(生長点) 中心葉が綴られている/細かい糞 シンクイムシ。綴られた葉ごと摘み取り、畑の外へ
葉裏 卵の塊/小さな幼虫の集団 ヨトウ類。葉ごと取れば数百頭をまとめて処理できる
葉の表面 白くかすれた部分/数mmの小穴 かすれはコナガ・ヨトウ若齢、小穴はキスジノミハムシ
株元・地際 苗が根元から倒れている ネキリムシ。株元の土を浅く掘ると見つかることが多い

頻度は、定植・播種の直後10日間はできれば毎日、その後は週2回を目安に。時間帯は朝か夕方の涼しい時間が向いています。日中は虫も株も動きが鈍く、覆いを開けること自体が株の負担になります。

畑が広くて全部は見られない場合は、見る畝を絞ってください。畑の北側、雑草地に接した畝、去年いちばん被害の多かった場所——こうした「出やすい場所」を数畝決めて毎日見ます。そこで発生が確認できたら、その日のうちに畑全体を点検する。この二段構えなら、面積が広くても回ります。

見つけた虫や被害葉は、必ず畑の外に持ち出してください。畝間に落としただけでは、幼虫はまた株に戻ります。

発生量を「数で」把握する道具もあります。黄色い粘着板を畝の周囲に立てておくと、飛来したアブラムシ類やコナジラミ類が付着します。駆除の手段というより、「今どのくらい飛んでいるのか」を知るための道具です。付着数が急に増えたら、見回りの頻度を上げる合図になります。

また、各県の防除所はフェロモントラップによる捕獲数を発生予察に用いています。公表されている捕獲データを見るだけでも、その年の発生の多い少ないは判断できます。

もうひとつおすすめしたいのが、簡単な記録を残すことです。「9月2日、ハクサイの畝で芯に糞。3株処分」という程度、写真だけでも構いません。「うちの畑では、いつ、どの虫が、どの品目に出るのか」——全国向けの情報からは得られない、その畑だけのデータであり、翌年の判断材料になります。


④手で減らす ― 卵のうちに潰す、若齢のうちに取る

4つめは、見つけて取り除く——いわゆる捕殺です。原始的に聞こえますが、確実性という点ではいちばん信頼できる方法で、薬剤が届かない相手にも、覆いをすり抜けた個体にも効きます。

ただし捕殺の効率は、いつ手を出すかで何十倍も変わります。要点は2つ、卵のうちに潰す、若齢のうちにまとめて取る——これだけです。

卵塊は、一枚の葉で数百頭ぶんです。ヨトウ類は卵を数十〜数百個の塊で産み、多くは葉裏につきます。淡い色の小さな粒が毛のようなもので覆われて集まっていたら、それです。見つけたら葉ごと摘み取ってください。指で潰すより確実で、しかも速い。この一枚で、二週間後に畝じゅうに散らばるはずだった数百頭が消えます。

若齢の集団は、「白く浮いた葉」を目印に探す。孵化したての幼虫は葉裏に固まって薄皮を残して食べるため、離れて畝を見渡すと数枚の葉だけが白くかすれて見えます。この白い葉に近づけば、裏に集団がいます。ここでも葉ごと取るのが正解です。分散したあとでは何十倍も時間がかかります。株を一つひとつ見るより先に、まず畝全体を離れて見渡すほうが速く見つかります。

シンクイムシは、綴られた芯ごと摘む。中心葉が糸で綴られ、細かい糞が見えたら、その中に幼虫がいます。綴られた部分ごと摘み取って畑の外へ。すでに生長点が食われていれば回復は望めませんが、その一頭を残せば隣の株に移ります。

ネキリムシは、株元を浅く掘る。朝、苗が根元から切られて倒れていたら、その株から半径数cm、深さ2〜3cmの土をそっと掘ってみてください。丸まった灰褐色の幼虫が出てくることが多くあります。倒れた苗を片づけて終わりにすると、翌朝また隣の株がやられます。

取ったものは、必ず畑の外へ。畝間に落としただけでは、幼虫はまた株に戻ります。卵塊のついた葉は袋に入れて口を閉じてから処分を。畑の隅に積んでおくと、そこで蛹になって次の世代につながります。①で残渣を片づける話と、ここはつながっています。

労力についても正直に申し上げておきます。捕殺が現実的に回るのは、株数がある程度までの畑です。数十株なら1畝あたり数分ですが、数百株となると卵塊を探して回るだけで一日が終わりかねません。面積が広い畑では、④は「重点畝だけ」に絞るのが現実的です。

それでも、④をゼロにはしないでください。③で見つけたものをその場で処理するのが④であり、この2つは実質的にひと続きの作業です。「見つける」と「取る」を分けないことが、いちばん効率のよいやり方です。


⑤畑の味方を減らさない ― 天敵と付き合う

害虫の話ばかり続けてきましたが、畑には味方もいます。テントウムシ、ヒラタアブの幼虫、クモ類、害虫の体に卵を産みつける寄生蜂。放っておいても害虫の数を抑えてくれる存在です。5つめの手は、この働きをこちらから壊さないという話です。

特にアブラムシに対しては、天敵の働きが大きいことが知られています。コロニーを見つけたとき、その近くにテントウムシがいるなら、少し様子を見るという判断もあり得ます。ここで慌てて手を出すと、味方ごと減らしてしまうことがあります。

気をつけたいのが、広い範囲の虫に効く薬剤は、天敵も同時に減らしてしまう点です。害虫が一時的に減っても、天敵がいなくなった畑では、次に飛来した害虫が一気に増えることがあります。薬剤のあとにかえって虫が増えたように感じるのは、この現象が関係している場合があります。

もうひとつ、②の被覆についても同じ視点が必要です。資材で覆えば害虫は入りませんが、天敵も入りません。いったん内側に虫が入り込むと、そこは天敵のいない安全地帯になります。覆ったから安心ではなく、覆ったからこそ、中を見る必要がある——「週に2回はめくって確認を」と申し上げたのは、そのためです。

とはいえ、幼苗期に天敵の働きだけを頼りにするのは危険です。天敵が増えるには時間がかかりますし、害虫が増えてから遅れて増えるのが自然の順序です。その時間差のあいだに、小さな苗は食い尽くされてしまいます。初期は①〜④で守り切り、株が育ってからは天敵の働きも計算に入れる——この使い分けが現実的です。5つのなかで⑤だけは効き始めが遅い。そう理解しておくと、期待の掛け方を間違えずに済みます。


薬剤を使うときに押さえておきたいこと

ここまでの5つを実行しても、それだけで完結しない場面はあります。薬剤を併用する場合に、押さえておきたい原則を整理します。

第一に、登録内容の確認です。農薬は「どの作物に」「どの病害虫に」「いつまで」「何回まで」使えるかが製品ごとに定められています。同じ虫が相手でも、作物が違えば使えないことがあります。必ず最新のラベル表示を確認し、適用の範囲内で使ってください。登録内容は変更されることがあるため、以前の記憶で判断しないことが大切です。

第二に、タイミングです。チョウ目の幼虫は、小さいうちほど薬剤が効きます。逆に、大きくなった幼虫、生長点に潜り込んだシンクイムシには、薬液がそもそも届きません。「大きくなってから、強い薬で」という発想は、この時期の相手には通用しないと考えてください。この点は④と同じで、早い段階で手を出せるかどうかがすべてです。

第三に、連用を避けることです。コナガをはじめ、薬剤抵抗性が発達しやすい害虫が知られています。同じ作用のものを繰り返し使うと、効かない個体が畑に残っていきます。殺虫剤にはIRACコードという作用機構の分類番号が付されているので、この番号が異なるものを組み合わせるのが基本です。製品名や系統名ではなく、この番号で管理すると確実です。

第四に、かけ方です。チョウ目の幼虫もアブラムシも、多くは葉の裏側にいます。株の内側と葉裏に回るよう、角度を変えてかけることを意識してください。アブラナ科の葉は蝋質があって水をはじきやすく、ラベルで展着剤の併用が認められている場合は、その指示に従って使うと付着がよくなります。

第五に、地域の情報を使うことです。各県の病害虫防除所の発生予察情報や、JAが配布する防除暦には、その地域・その年を踏まえた具体的な指針が示されています。全国一律の情報より、お住まいの地域の情報のほうが精度が高いのは言うまでもありません。

そして、薬剤は①〜④の代わりにはなりません。②を省いて済ませようとすると散布回数が増え、⑤の天敵を減らし、結果として抵抗性の問題を早めます。逆に、①〜④をきちんと組んでおけば、頼る場面そのものが減ります。使う・使わないの二択ではなく、他の手を厚くするほど出番が減る——そういう位置づけの手段です。

【注目ポイント】薬剤を使わない方針の場合、どこを厚くするか
無農薬・減農薬で栽培される方は、②の資材を一段細かいものにし、③の見回りを毎日に近づけ、④を欠かさない——この3点で補ってください。特に初期の10日間の見回りが、結果を大きく左右します。

品種選びでできること・できないこと

種苗を扱う立場として、ここは誠実に申し上げておきたい点です。「虫に強い品種を選べば、対策を軽くできますか」——毎年いただくご質問ですが、答えは半分だけ「はい」です。

品種による差は確かにあります。葉の厚さや蝋質の量、生育の速さによって、食害の受けやすさに違いは出ます。ただし、その差は「対策を省ける」ほどの大きさではありません。虫は葉があれば食べに来ます。ここを期待して他の手を薄くすると、ほぼ確実に失敗します。

もうひとつ、混同されやすいのが耐病性の表示です。カタログで「耐病性」として表示されているのは、多くの場合は病気に対する強さであって、食害してくる虫に対する強さではありません。「病気に強い品種だから虫にも強いだろう」という読み替えは成り立ちません。

では品種選びは初期害虫対策と無関係かというと、そうではありません。効くところは、はっきりしています。

ウイルス病の抵抗性表示には、意味があります

アブラムシが媒介するウイルス病については、抵抗性表示のある品種を選ぶことに、はっきりした意味があります。虫そのものを防げなくても、その先の被害を軽くできるという考え方です。

アブラムシの被害の本体は「吸われること」ではなく「ウイルスを持ち込まれること」です。羽のある個体が飛来して短時間吸汁するだけでも感染は成立するため、飛び込みを完全にゼロにするのは現実には難しい。だからこそ、①や②で飛び込みを減らし、なお入られたときの保険として抵抗性表示を見る——この重ね方が現実的です。

もうひとつ、生育の速さも判断材料になります。播種から収穫までの日数が短い品種は、危険な幼苗期を短く済ませられます。特に軟弱葉菜では、この差がそのまま効いてきます。

そして、適期の幅が広い品種を選んでおけば、①の「まき時を数日ずらす」という手が使いやすくなります。品種選びは、虫を直接防ぐ手ではなく、他の手を使いやすくする手——そう捉えていただくのが実際に近いと思います。

どの品種がその畑と作型に合うかは、地域と播種時期で変わります。「この時期からまくなら、どれが向いていますか」といったご相談は店頭でも承っております。畑の条件をうかがえれば、絞り込みのお手伝いができます。


品目別・特に警戒したい虫

同じ秋冬野菜でも、科が違えば来る虫も変わります。畑の畝ごとに警戒対象を整理しておくと、③の見回りの精度が上がります。

品目 特に警戒したい虫 この品目ならではの注意点
ダイコン・カブ シンクイムシ、キスジノミハムシ 直播なので発芽直後から被覆。間引きで開ける前後がいちばん危ない
ハクサイ・キャベツ シンクイムシ、コナガ、ヨトウ類 芯をやられると結球しない。生長点の確認を最優先に
ブロッコリー・カリフラワー シンクイムシ、コナガ、アブラムシ 後半は花蕾の内部にアブラムシが潜り込む。早めの飛来防止が効く
コマツナ・ミズナなど コナガ、キスジノミハムシ、シンクイムシ 葉を食べる野菜なので収穫期まで被覆したままにするのが基本
ホウレンソウ ヨトウ類、アブラムシ、ハモグリバエ アブラナ科ではないがヨトウ類は来る。葉裏の卵塊を確認
レタス類 ヨトウ類、アブラムシ、ナメクジ アブラナ科の虫は来にくいがヨトウ類とナメクジは別
タマネギ(育苗) アザミウマ類、ネギコガ 苗床の段階で守る。細い苗は食害の影響が大きい

表のとおり、アブラナ科に警戒対象が集中しています。秋冬野菜の主力がアブラナ科である以上、これは避けられません。アブラナ科の畝は最初から5つの手をひととおり組む前提で設計するのが、この時期の合理的な進め方です。

逆に、ホウレンソウやレタスの畝は、アブラナ科ほど神経質にならなくても済みます。限られた資材と時間を、どの畝に優先して投入するか——この配分だけでも、秋作の成功率は変わります。


よくある疑問にお答えします

Q. 5つ全部やらないと、意味がありませんか?

そんなことはありません。2つ重ねるだけでも、ひとつだけのときとは結果がはっきり変わります。おすすめは、株数の少ない畑では③+④、面積の広い畑では①+②。余力があれば足していく順序で構いません。全部を中途半端にやるより、2つを確実にやるほうが結果は良くなります。

Q. 覆いをかけたら、受粉できないのでは?

秋冬野菜については心配いりません。ハクサイ、キャベツ、ダイコン、コマツナなどは、葉・根・花蕾を収穫する野菜であり、実を収穫するわけではないからです。虫による受粉は必要ありません。これは、受粉が収穫量に直結する果菜類とは根本的に事情が異なる点です。

Q. 無農薬でやりたいのですが、どこを厚くすればよいですか?

②の資材を一段細かくし、③の見回りを毎日に近づけ、④を欠かさない。この3点です。この3つがきちんと回っている畑なら、無農薬でも秋作は十分に成立します。①で飛来を減らしておくと、③と④の負担が目に見えて軽くなります。

Q. いつまで覆っておけばよいですか?

目安は飛来が減る11月頃までです。ただしハクサイやキャベツは結球が始まると株が大きくなり、資材に葉が触れやすくなります。そのタイミングで防虫ネットを外すか、大きなトンネルに作り替えるかの判断が必要です。コマツナやミズナなど葉を食べる軟弱葉菜は、収穫期まで被覆したままが基本。暖地では冬でも暖かい日に活動する虫がいますので、外したあとも見回りは続けてください。

Q. プランターや小さな家庭菜園でも、同じ対策が必要ですか?

必要です。虫は面積の大小で飛来先を選びません。むしろ株数が少ないぶん、数株やられただけで収穫がなくなります。一方で株数が少ないことは④にとって大きな有利でもあり、数株なら毎日の目視と手取りだけでかなり守れます。プランター用の小型のトンネル資材もありますが、裾を鉢の縁でしっかり留める点だけ、畑と同じ注意が必要です。

Q. すでに芯を食われてしまった株は、どうすればよいですか?

残念ながら、生長点が完全に食害された株の回復は期待できません。脇芽がいくつか出ることはありますが、正常な結球には至らないのが通常です。早めに抜いて植え直すか、その畝を別の品目に切り替えるかの判断になります。まだ適期の範囲内なら、生育の早い葉菜類にまき直す選択肢もあります。様子を見ているうちに時期を逃すのが、いちばんもったいない結果です。抜いた株は必ず畑の外へ。中の幼虫が隣の株に移ります。


まとめ

2026年の秋、押さえたい5つのこと
  1. ①寄せつけない。前作の残渣を片づけ、周囲のアブラナ科の雑草を抜き、まき時を数日ずらして分散させる。費用はほぼゼロで、他の4つの効きを底上げします。
  2. ②入れない。目合いの表示がある防虫ネットなどで覆う。効果を決めるのは資材そのものより張り方で、裾は埋める、葉を触れさせない、開けた日に閉める——この3点です。
  3. ③早く見つける。見る場所は芯・葉裏・葉の表面・株元の4か所。決めておけば1畝あたり数十秒です。初期の10日間は毎日を目安に。
  4. ④手で減らす。卵のうちに潰し、若齢のうちに葉ごと取る。ヨトウ類の卵塊は一枚で数百頭ぶん。③と一体の作業として、見つけたその場で処理します。
  5. ⑤畑の味方を減らさない。天敵は幼苗期の主役にはなりませんが、秋作の中盤以降を支えます。広い範囲に効く手段を使いすぎないことが、そのまま配慮になります。

この5つに、必要なら薬剤という手が加わります。他の手を厚くするほど出番が減る性質のものです。使うときは、ラベルの適用範囲を確認し、地域の防除暦を参考に、IRACコードの異なるものを組み合わせてください。

そして、勝負は定植・播種からの2週間です。8月下旬から9月上旬は飛来の山が重なり、夏が高温少雨だった年は発生が多くなる傾向があります。2026年は、警戒レベルを一段上げるのが妥当な年だとお考えください。

秋冬野菜は、最後の仕上げでつまずくことの多い作型です。逆に、ここを乗り切ってしまえば、そのあとは比較的手がかかりません。気温が下がるにつれて虫の活動は落ち着き、株も大きくなります。いちばん手をかけるべき時期が、いちばん短い期間に集中している——そういう作型だとお考えください。

5つのうち、まとまった費用がかかるのは②だけです。残りの4つは、段取りと時間の使い方の問題です。今日からでも、まだ植えていない畝の周りの草を抜く、明日の朝は芯を見て回る——そこから始めていただければと思います。

資材の選び方や、畑ごとの虫の傾向、この時期からまける品種についてのご相談も承っております。「うちの畑では毎年この虫が出るのだが、どうしたらよいか」といった具体的なご質問ほど、お役に立てることが多くあります。どうぞお気軽にお声がけください。

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